ヤングケアラーとは
(18歳以上の若者のケアラーのことを「若者ケアラー」と区別し呼ぶ場合もあります)
ヤングケアラーがおこなうケアの内容は、食事の用意や洗濯等の家事、家族の介助や通院の付添い、投薬・金銭管理、感情面での寄り添い、きょうだいの世話・見守り、家族のための通訳など多岐に渡ります。
ケアの内容やケアに対する責任が本人にとって大きな負担となっていても、本人や周囲にその自覚がないケースや、福祉サービス等につながることができず、一人あるいは家庭内で負担を抱え込んでいるケースも多いと考えられています。 ※「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」において、子ども・若者育成支援推進法が改正※1され、「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、ヤングケアラーが国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象として明記されました。
※1 公布日(2024年6月12日)施行
調査の進むヤングケアラー
日本国内で、ヤングケアラーという言葉が広く一般に使われるようになったのは最近のことです。2014年にイギリスで「子どもと家族に関する法律」が成立し、日本でも2020年に埼玉県で全国初のケアラー支援条例が制定され、条例内でヤングケアラーへの支援について明記されました。こうしたなか、政府や地方自治体の調査も進み、徐々にその実態が明らかになってきています。
2021年の政府の調査では、公立中学2年生の5.7%(約17人に1人)、公立の全日制高校2年生の4.1%(約24人に1人)が「世話をしている家族がいる」と回答しています。1学級につき1~2人のヤングケアラーが存在している可能性があるということが分かりました。
ヤングケアラーが抱える困難
「お手伝いは、大切なことじゃないの?」。子どもがお手伝いをすることや、家族同士が支え合うことは、とても自然で、大切なことです。
しかし、政府の調査では、世話をしている家族が「いる」と回答した中高生のうち、 約1~2 割が、平日1日7時間以上を世話に費やしている、と回答したほか、世話を理由に、睡眠が十分にとれていなかったり、学校に遅刻することが多くなったりするなど、生活に深刻な影響が出ている子どもたちがいることが分かりました。
ヤングケアラーが抱える困難は、ケア内容そのものの負担だけでなく、ケアに追われる中で、授業、部活動への参加や友人との交流、勉強に充てる時間などが制限され、十分な教育・社会経験の機会を得ることができなかったり、周囲から孤立し人間関係に困難が生じたりと、ケアを担う子どもたち自身の人生に大きな影響を及ぼす可能性が存在することにあるのです。
安心して暮らせる社会に向けて
少子高齢社会を迎えるにあたって、家族のケアが必要になる場面もますます増えていくことが予想されます。
また、家庭内の事情であるために、外部のサポートにつながり辛いことも、ヤングケアラーを取り巻く課題のひとつです。
日本財団は、子どもたちが子どもらしい時間を過ごし、その家族も安心して暮らせる社会の実現に向け、ヤングケアラーとその家族に対する支援を実施していきます。
イギリスで「子どもと家族に関する法律」が成立。ヤングケアラーを法的に位置付け、地方自治体に対して、適切な支援につなげることを義務づけた。
一般社団法人日本ケアラー連盟・ヤングケアラープロジェクト(ヤングケアラー研究会)が、新潟県南魚沼市教育委員会の協力を得て、市内の公立小学校・中学校・総合支援学校の全教職員を対象に、日本初の体系的なヤングケアラー調査を実施。
埼玉県が全国初のケアラー支援条例を制定。18歳未満の「ヤングケアラー」に対する教育機会が確保されるべき旨などが明記される。以降も、複数の自治体で類似の条例が制定される。
厚生労働省及び文部科学省が連携し立ち上げた「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」が、ヤングケアラーの実態に関する実態調査の結果を発表。国内においてヤングケアラー支援の動きが広まる。
「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」において、子ども・若者育成支援推進法が改正される。「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」として、国・地方公共団体等が各種支援に努めるべき対象にヤングケアラーが明記された。